経理業務では、貸借のペアを探す作業が発生することがあります。
私も業務で使用するため、様々な方法でこれを自動化しようと挑戦しましたが…なかなかうまくいきませんでした。
今回は、その理由と試行錯誤の過程をまとめました。
1. 貸借ペアの自動化はできる?
完全一致なら比較的簡単です。例えば、
借方(A列) | 貸方(B列) |
---|---|
50,000 | 50,000 |
75,000 | 75,000 |
30,000 | 30,000 |
このような場合、VBAやExcelの条件付き書式を使えば、簡単に色を付けたり、抽出したりできます。
しかし、問題は金額が完全に一致しない場合です。
2. 誤差を考慮したペアリングの壁
現場では「誤差5円までならOK」といったルールで処理することが多いです。
例えば、
借方(A列) | 貸方(B列) |
50,000 | 49,998 |
75,000 | 75,002 |
30,000 | 29,997 |
このように、誤差が数円ある場合に、どの貸方とどの借方をペアにするかが問題になります。VBAでループを組んで処理してみたものの、組み合わせが多すぎて計算が重くなってフリーズしてしまいました。
3. 分割された金額の組み合わせ問題
さらに厄介なのが、1つの借方に対して、複数の貸方が対応するケースです。
借方(A列) | 貸方(B列) |
288,888 | 150,000 |
138,887 |
この場合、「150,000 + 138,887 = 288,887」で誤差1円。ペアとして処理したいのですが、VBAでは組み合わせの計算が膨大になりすぎて処理時間がかかりすぎました。
4. GASやPower Automateも試してみたけど…
GAS(Google Apps Script)でも試しましたが、スプレッドシート上で処理する都合上、動作が遅くなりがちでした。
Power Automateも考えましたが、権限の問題やカスタマイズ性の低さから、実用には向いていませんでした。
5. 結論:「なんとなく」の処理は自動化しづらい!
最終的にわかったのは、貸借のペアを機械的に判断するのは難しいということです。完全一致なら自動化できますが、
-
誤差を考慮する
-
分割された金額を合算して考える
といった処理は、まだまだ人間の勘や判断力に頼る必要があると痛感しました。
6.(ちなみに)AIに聞いてみました
なんとなく当たりをつけて、ここかな?という、ふわっとした判断はAIには出来ないのか?と聞いてみたところ、以下のような返事が返ってきました。
【「なんとなくここかも?」っていう感覚的な判断は、AIにとっても難しい領域だね。特に、「複数の組み合わせの中から、最適なペアを選ぶ」 みたいな作業は、組み合わせのパターンが爆発的に増えるから、計算負荷がすごいことになる。
AIが得意なのは、
・パターンの識別(過去データを学習して「こういうペアが多い」と判断)
・確率的な提案(「たぶんこのペアが正解っぽい」とスコアをつける)
だけど、「どれが一番実務に合うか」を決めるのは、最終的に人間の勘や経験が必要になることが多い。】
とのことです。人間であれば適用欄などを見ながらなんとなくここかな?とあたりを付けて探していくことができますが、まだAIには難しいとのことでした。
今後のAIの発展次第では実現するようになるのかもしれませんが、現状では 「AI+人間の直感」をうまく組み合わせるのが現実的なようです。
(※筆者はただの経理事務員なので、エンジニアさんとかであればうまいこと組むのかもしれませんが…いいやり方があったら教えてください)
ちなみにGASを使って完全一致のペアを探し当てることはできるので、ある程度のあぶり出しに使っていただければと思います。
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