RPA担当者が張り切りすぎると失敗する?導入時に気をつけたいこと
近年、業務の効率化を目的として、多くの企業がRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入しています。特に、Power Automate Desktop(以下、PAD)などのノーコード・ローコードツールは、プログラミングの知識がなくても扱えるため、幅広い企業で活用が進んでいます。
しかし、RPA導入時に「担当者が張り切りすぎる」ことで、思わぬ失敗を招くケースが少なくありません。本記事では、その原因と回避方法について解説します。
1. RPA導入でよくある「張り切りすぎ問題」とは?
RPAの導入が決定すると、多くの企業では特定の担当者が選ばれ、ツールの学習や運用を任されます。その担当者が「自分がすべてやらなければならない」と強く思い込むことで、次のような問題が発生します。
属人化が進む
RPAのスクリプト作成や管理を1人の担当者が独占すると、他の社員が使えなくなります。その結果、RPAのメリットが社内全体に広がらず、活用の幅が狭まってしまいます。
業務のボトルネックになる
自動化の要望が増えても、担当者が1人で対応していると処理が追いつかなくなります。「結局手作業の方が早い」という状況が生まれ、RPA導入の意義が薄れてしまうのです。
担当者の異動・退職リスク
RPAの知識やスクリプトの管理が特定の担当者に集中していると、その人がいなくなったときに業務がストップするリスクが高まります。
2. RPA担当者は「開発者」になってはいけない
RPAは、もともと複雑なプログラミング知識が不要で、IT関連部署じゃなくても活用できるツールとして設計されています。しかし、担当者が抱え込みすぎると「RPA=その人しか分からないもの」になり、組織全体での活用が進みません。
一人経理などで社内の誰もRPAに詳しくない場合は、開発者にならざるを得ない場合もあるかもしれませんが、その場合でもRPAのシナリオや取り扱いのマニュアルを作成し、業務が属人化しないように気を付けることが重要です。これにより、担当者の異動や退職時の負担を軽減できます。
3. RPA担当者の理想的な立ち位置
RPA担当者は、「RPAを開発する人」ではなく、「現場の人にRPAを活用してもらうためのサポート役」としての意識を持つことが大切です。
理想的なRPA担当者の役割
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教育・研修を行い、業務担当者がRPAを使える環境を整える
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業務担当者自身が簡単なRPAを作成できるようにする
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「すべて自分でやる」ではなく、「みんなで活用する」仕組みを作る
こうすることで、RPAが組織全体に浸透し、業務効率化の効果を最大化できます。
4. 現場でRPAを活用してもらうためのコツ
RPAを組織全体で有効活用するためには、次のような工夫が有効です。
1. 簡単なフローを作る
RPAを活用する最初のステップとして、すぐに効果が見える簡単なフローを作成しましょう。例えば、「毎朝の定型業務を自動化する」「よく使うデータの整理をRPAに任せる」などのシンプルな自動化から始めると、現場の理解が進みやすくなります。
▼数分でできるPower Automate Desktopの簡単なフローはこちら
2. RPAに向いている業務を見極める
すべての業務がRPAに適しているわけではありません。例えば、次のような業務はRPAとの相性が良いです。
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繰り返し行われる単純作業
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定型化されたルールで処理できる業務
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人為的なミスを減らしたい業務
業務の適性を見極めたうえで、自動化を進めることが重要です。
RPA担当者が最初にやるべき「チェックリスト」を参考に、業務適正を見極めてください。
▼チェックリストはこちら
3. 「ちょっとした改善」から始める
最初から大規模な業務を自動化しようとすると、設計やテストに時間がかかり、なかなか導入が進みません。まずは「手作業で10分かかる業務をRPAで5分に短縮する」といった小さな改善から始め、成功体験を積み重ねていくことがポイントです。
4. 勉強のためのリソースを用意する
RPAの知識を社内で共有するために、以下のような学習リソースを活用するのもおすすめです。
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RPA関連の書籍を購入し、社内で回し読みする
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定期的な勉強会やハンズオン研修を実施する
特にWindows11以降に標準搭載されているRPAのPower Automate Desktop(PAD)は無料で使え、個人単位で利用できるため、特定の担当者に依存せずに活用しやすいツールです。
社内でRPAの知識を広め、誰もが活用できる環境を整えることで、業務の効率化を着実に進めていきましょう。
▼Power Automate Desktopのインストールと簡単な操作方法はこちら
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まとめ
RPAは特定の担当者だけが扱うのではなく、組織全体で活用することで最大の効果を発揮します。しかし、担当者が張り切りすぎて業務を独占してしまうと、属人化や業務の停滞につながる可能性があり、RPA導入の効率化効果が薄れる恐れがあります。
RPAのメリットを最大限に活かし、業務の効率化を進めていきましょう。