企業の代表メールアドレス「info@」には、営業・経理・人事・システムなどさまざまな内容のメールが日々届きます。
そのたびに人がひとつずつ内容を確認し、適切な部署に転送している方も多いのではないでしょうか?
「毎回手動で振り分けるのが大変…」「属人化してしまっていて対応が遅れる…」といったお悩みがある方におすすめしたいのが、ChatGPTを活用したメール自動振り分けシステムです。
今回は、Power Automate Desktop(PAD)×ChatGPT APIを使って、info@宛のメールを自動分類&振り分けするAI総合受付システムの構築方法をご紹介します。
ChatGPTでメールを振り分けるメリットとは?
メールの自動振り分けと聞くと、「件名に特定のキーワードが入っていたら…」といったルールベースのシステムを想像する方もいるかもしれません。
しかし、ChatGPTを使った場合は、文章の内容を読み取り、“意味”に基づいて適切な部署に割り振ってくれるという強みがあります。
たとえば:
といった形で、メール本文のニュアンスからAIが文脈を理解し、自動で振り分けてくれます。
システムの全体像と仕組み
このシステムでは、以下のような流れで処理を行います:
-
Outlookから未読メールを取得
-
本文から改行や不要な空白・URLなどを除去
-
まずgpt-3.5-turboでメール内容を要約(長文対応のため。gpt-3.5-turboとgpt-4o-miniではトークンの金額が10~20倍位違うため、先に安価なgpt-3.5-turboに長文を読み込ませてすっきりしたものをgpt-4o-miniに読ませます)
-
次にgpt-4o-miniで部署分類と理由を出力
-
出力を解析し、「営業」「経理・人事」「システム」「その他」「広告」に分類
-
分類に応じて、メールを対応部署へ転送。理由も添付
Power Automate Desktopでの構築手順
① ChatGPT APIキーを取得
OpenAIの公式サイトでAPIキーを取得し、PAD内で変数として設定しておきます。
▼API Keyの取得方法
▼PADで変数設定
② Outlook起動&未読メール取得
PADの「Outlookを起動する」「メールメッセージを取得」アクションを使い、未読メールのみを対象とします。
③ プロンプト設定で振り分け精度アップ
プロンプトは精度を大きく左右します。以下は一例です:
あなたは、とある商社の総合受付係です。この会社では、日用品を販売しており、以下の3つの部署があります。
・営業部:見積依頼、商談、取引、導入サポートなどお客様とのやり取りを担当
・経理・人事部:入金確認や商品の発送手配、請求書、支払い、領収書の発行、契約書の処理などを担当。また入退社、人事に関する問い合わせも担当。
・システム部:Webシステムや社内ツールの障害・トラブル対応、導入・保守などを担当。
これからinfoに届いたメールの本文を渡します。内容を読み取り、もっとも対応が適切だと思われる部署を「営業」「経理・人事」「システム」「その他」「広告」から1つ選んでください。
ただし、以下のようなケースは例外とし、必ず「その他」と回答してください。
(例:人事システムの相談 + 見積もり + 請求書)など複数部署に関係しそうな用語が混在している場合。もしくは明確に判断がつかない場合。
迷惑メール・広告・スパムの可能性が高い場合は「広告」と分類してください。
出力は以下の形式にしてください:部署:◯◯ 理由:◯◯
★繰り返し処理を開始
④ メール本文の整形
New Varに適当に置き換えてほしい文字を入れる
EmailBodyにメール本文を入れる
正規表現で改行、URL、記号、タブを除去
除去が完了したら、gpt-3.5-turboへ渡します。
要求本文の構成:
{
"model": "gpt-3.5-turbo",
"messages": [
{
"role": "system",
"content": "%prompt%"
},
{
"role": "user",
"content": "以下のメール内容を完結に要約してください\n\n==== メール内容ここから ====\n%Replaced5%\n==== メール内容ここまで ===="
}
],
"max_tokens": 200,
"temperature": 0.5
}
出力された要約をgpt-4o-miniに渡し、最終判断と理由を得ます。
要求本文の構成:
{
"model": "gpt-4o-mini",
"messages": [
{
"role": "system",
"content": "%prompt%"
},
{
"role": "user",
"content": "==== メール内容ここから ====\n%JsonAsCustomObject2%\n==== メール内容ここまで ===="
}
],
"max_tokens": 200,
"temperature": 0.5
}
⑤ 出力結果の解析と転送処理
出力された「部署名」と「理由」をそれぞれ変数に格納し、If文
で対象部署へ転送。
メールの件名や本文に理由を添えることで、受信側の理解もスムーズになります。
▼全体像
振り分け精度とプロンプトの最適化
このシステムの精度は、プロンプト設計に大きく依存します。
ポイントは、「判断に迷ったら“その他”に寄せるよう指示する」こと。
理由は、AIは頑張って何かしらに振り分けようとしがちですが、それによって誤分類が起きやすくなります。
また、「広告」と判定されたものもすぐ削除せず、一度専用フォルダに隔離するなどの対応をするとより安全です。
なお、ChatGPTは感情分析も得意なため、単純な振分けのみならず、たとえば「怒っていたら至急対応と記入しSlackへ通知」など、応用的な仕分けも可能です。
ChatGPTは“完璧”ではないが“実用的”
AIの出力は完璧ではありません。ですが、「人がすべて目視で確認するより、まずはAIが一次振り分けしてくれる」という導入の仕方であれば、業務効率は確実に向上します。
しかも、ChatGPTは分類結果に「なぜその部署だと判断したか」の理由まで教えてくれるので、プロンプトの見直しや改善もスムーズです。
まとめ:ChatGPT×PADで業務を“半自動化”しよう
今回ご紹介した仕組みを活用すれば、
-
毎日のメール対応がグッと楽に
-
振り分けの属人化を回避
-
社内の反応スピードも向上
といった業務の見える化と効率化が実現できます。
特別なプログラミング知識がなくても、月800円〜のChatGPT APIとPower Automate Desktopを使えば、AI総合受付システムがあなたの会社にも導入可能です。
ぜひこの機会に、“人の目”と“AIの力”を組み合わせた次世代の業務フローを体験してみてください。
💡 もっと詳しく自動化やAPI連携を極めたい方へ:
AIとPower Automate Desktopを組み合わせた業務自動化に興味がある方には、以下のような書籍もおすすめです👇
![]() |
Power Automate for desktop×ChatGPT業務自動化開発入門 RPAとAIによる自動化&効率化テクニック 新品価格 |
RPAとAIによる効率化テクニックが実践的に学べる一冊です。筆者のように、初心者からステップアップしたい方にもピッタリ!
▼この記事が役に立ったらブックマークをお願いします